世界中の自動車メーカーが、自動車の電動化に向けてはHV(ハイブリッド車)、PHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)など環境に優しいエコカーを次々登場させています。日本の自動車メーカーも環境に優しい車が多く販売されており、各メーカー独自に開発したり、メーカー同士が手を組んで開発したりと試行錯誤しているのが現状です。日本の自動車メーカーはハイブリッドエンジンで世界のメーカーの1歩先を進んでいます。しかし、日本の車でハイブリッドカーが最も環境に優しい車かと言われれば、答えはNOです。
2021年現在、最も環境に優しい車はトヨタが販売しているミライというFCVです。従来のハイブリッド技術と燃料電池を組み合わせており、車から排出されるのは水のみとなっています。この点だけでは二酸化炭素を排出しないEVとは変わりありません。FCVは水素、EVは電気を必要としますが、どちらも自然に発生するものではなく、人工的なものです。水素は天然ガスから作り、電気は発電所で作られますが、どちらも作る過程で多くの二酸化炭素が発生します。また、どちらも蓄電用のバッテリーが必要で、バッテリーを製造する過程でも二酸化炭素が発生してしまうのです。
現在は水素と電気を製造するために排出する二酸化炭素の量はほとんど同じです。同じ距離を走ると仮定し、どちらが多くエネルギーを消費するかを比較すると、FCVのほうが消費量が少なくなります。ただし、これはFCVとリチウムイオンバッテリーを搭載したEVを比べた場合です。劣化や爆発の心配が少ない全個体電池が普及すればEVが優位に立ちますが、2021年現在は全個体電池は開発過程であり、量産化するには時間がかかります。全個体電池の登場で現在のEVと比べて1回の充電で走れる距離が格段に改善すると言われています。
当然FCVにも全個体電池を搭載予定ですが、バッテリー容量が小さいため全個体電池が登場すると二酸化炭素排出量はEVのほうが少なくなります。また、FCVは水素ステーション、EVは電気スタンドで充電しますが、水素ステーションの設置には大きなコストがかかる反面、電気スタンドは低コストで設置可能です。そのためFCVよりもEVのほうが人気があります。多く販売されれば開発費を回収でき、多額の投資もできるため需要と供給を考えれば、FCVは現在の10倍販売し、さらなる効率化を目指して投資をしなければ、EVに環境性能トップの座を譲ることになるでしょう。